手記28に書きましたが家族の誰もわたしが逮捕連行されたことを知りませんでした。わたしが家を出た時みな眠っていたからです。
わたしも逮捕の直前家の方から銃声が聞こえたことしかわかりませんでした。その時家族になにが起きたのでしょうか。
5人の子どもがいます。
アウース 男 9才 小学5年生
ハムーディ 男 7才 小学2年
ナウラス 女 5才
ニブラス 女 3才
ゼナ 女 生後85日
(当時)
妻は真夜中突然ドアを叩く音で眠りから覚めました。玄関のほかに二つのドアがあったのでいったい家のどこのドアが叩かれたのかわかりませんでした。ドアは金属製で大きく響きそれだけでパニックになりました。
英語の叫ぶ声が聞こえたのでアメリカーがだろうということがわかりました。ドアを開けるしかありません。ドアを開けようとしたところいきなりドアの向こうから発砲されました。3発の銃弾がドアを打ち抜き破片が妻の手を傷つけました。殺されなかったのは幸運でした。金属片とガラスが部屋に飛び散りました。子どもたちは隣の部屋で眠っていました。
(わたしはこのようにドアを銃で撃ってその破片で失明した兵士を知っています)
妻は部屋の隅に逃れました。10人以上のアメリカーが押し入って来て身動きがとれなくなりました。その時のことを妻は言いました。「なぜ子どもたちを置いたままにしたのだろう!子どもたちを守ることが出来ないのに!」
兵士たちは家中をひととおり捜査し終えてようやく妻は子ども部屋に入ることができました。涙を流していた妻に「怖くないよママ、何も悪いことは起きないよママ」とニブラスは言うのでした。それは妻がいつも子どもたちに言っている言葉でした。その頃村では銃声や爆発音がしてそれに脅えて子どもたちが泣くと妻がそうしてなだめていたのでした。
生後85日の赤ん坊は無事でした。停電で真っ暗な部屋で兵士たちに踏みつぶされずにすみました。
たまたま泊まりに来ていた妻の弟(14才)は連れ去られました。その時一族にいた男はみな連れ去られたのです。
長男のアウースは兵士のリーダーに外に連れ出され聞かれました。「お前の父親はどこにいる?」アウースはわからないと答えました。兵士は彼に何か言ってつきとばしたそうです。アウースが覚えている言葉は「fuck you」でした。
兵士たちは家中を捜索し、バッグを見つけるとわたしの書類や写真、CDなどを詰め込みました。そのバッグはわたしが日本に来たとき、アウースの通学用に買ったものでした。
アウースは取り返そうと抗議しましたがまたも兵士に押しのけられたのでした。
兵士らは一時間ほど家にいて家具などを手当たり次第に壊しました。その間家族は外に出ることができず事態を伝えることができませんでした。
*アウースも大きくなりました。平和市民連絡会がバグダッドでアウースの幼稚園を訪問しカチャーシーを踊ってからもう8年です。 アウースはまだ「いやささ!」を覚えています。