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2010年9月9日木曜日

手記15:死体置き場

日曜日に葬儀でした。
バグダッドの治安は日に日に悪化していました。みながモルグ(死体置き場)に行くことを恐れていました。
わたしは父、妹の夫とバグダッドに一カ所あるモルグへ弟を引きとりに行くことになりました。
人間はいつか自身の宿命、運命に向き合うべきときがあります。
死はいたるところにあふれ私たちを取り巻いていました。
いつしか死への恐怖は消えました。
恐怖の世界で生き続けるより死んだほうがましだと思うようになっていました。

わたしはモルグに入りました。
人生でこれほどひどい状況を知りません。この場所とこの悲惨さを説明できる言葉が見つかりません。
死体は100体ほどあり地面に横たえられていました。首のない処刑された死体も並べられていました。
冷房設備も冷蔵設備もなくすさまじい悪臭でした。あたり一面、肉と流れ出た体液に覆われていました。野良猫数匹がうろついていました。
人間でいることがいやになりました。
たくさんの遺体の中から弟を判別するのは困難でした。死体の顔は大きく腫れ目は飛び出しほとんどが同じように見えるのです。弟が殺された日の写真を見せられていましたが、酷暑のバグダッドで3日もさらされて、激しく損壊した死体を弟と一致させることは不可能でした。イラクにはDNA検査などないのです。
その日、惜別の日が過ぎました。

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